BIM(ビム)とは?建築ビジネスでの活用法と3つのメリットを紹介
海外におけるBIM活用事例
2021.08.22

BIMwork
建設プロジェクトにBIMを有効活用することで、いくつかのメリットを生み出します。日本国内のBIM普及率は年々上昇しているものの、世界各国に比べると大幅に後れています。では、日本国内と海外ではBIMの実態にどのような違いがあるのでしょうか?
そこで本記事では、海外におけるBIMの状況、海外のBIM活用事例を解説します。最後までご覧になることで、日本と海外におけるBIMの相違点がわかるはずです。
海外におけるBIMの状況
まずは海外におけるBIMの状況を解説します。世界各国のBIMを理解しましょう。
アメリカ
BIMの発祥といわれているアメリカ。建設プロジェクトのほとんどでBIMが使用されていることから、BIM普及率は世界各国に比べて高い傾向があります。
2004年8月、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)では「米国の建築産業における不適切な情報の相互運用に関するコスト分析」という報告書を発表したことで、世界的に影響を与えました。また、この報告書に明記されている「労働生産性が向上しない要因」を周知したことで、チーム内のコミュニケーション方法が改善され、同時にBIMやCADのソフトウェアが相互運用されるきっかけとなりました。
中国
中国では建設ラッシュが続いていることから、BIMの導入については非常に積極的です。また、国内における膨大な建設需要に応えるためにもBIMが必要不可欠です。それらのこともあり、中国国内の幅広い分野でBIMが推進されています。
北京市に本社を構える「Taikong Technolog」では、中国全土をカバーするほどのチームを結成してBIM関連サービスを提供しています。さらに、中国でBIMを支援している「タイコン」は、独自のプラットフォーム「isBIM」を使用してBIMの活用性を広めています。
また、政府の力が強い中国では採算を度外視した3次元CADやBIMの導入が進められており、国レベルの研究が行われています。こういった理由から、中国のBIM普及率が年々上昇しています。
(出典 isBIM https://www.isbim.com.hk/people)
シンガポール
建設先進国の1つでもあるシンガポールでは、BIMの導入が早期から進められています。安全性が第一に考えられているため、BIMによる構造設計は政府以外の認定された第三者の検査技術者によって実施されます。また、生産性は二番目であることから、建設プロジェクトは政府主導で進められます。
建設行政を担当する通称BCAという組織は、BIM導入に至る資金面の支援や人材育成、実務支援などを提供してきました。資金面に関してはソフトウェアやハードウェアの購入費用、コンサル費用、トレーニング費用などが含まれます。
なお、シンガポールでは建設基準制度である「Buildability Score」というスコアが設けられています。BIMを活用して建築物を設計する際にはスコアを満たす必要があるため、国内におけるBIM運用の安全性が確保されています。
(出典 Building and Construction Authority (Singapore)
https://www1.bca.gov.sg/download-application-forms/buildability-score)
海外のBIM活用事例3つ
ここまで、海外におけるBIMの状況を解説しました。続いて海外のBIM活用事例を3つみていきましょう。日本国内との違いが明確になるはずです。
中国:上海タワー
海外のBIM活用事例1つ目として、中国の上海タワーを紹介します。基本設計はアメリカの「ゲンスラー事務所」が行い、構造設計はアメリカの「Thornton Tomasetti社」が実施しています。工事に至っては「上海建工集団」が担いました。
本プロジェクトはどれ1つとっても同じCWユニットがないため、施工する際にはBIMを活用した計画が必要不可欠でした。また、現場で活用したBIMの具体例は、仮置き場計画、取り付け順序、精度確保などがあげられます。
プロジェクトを進行させる上では共通認識が行える3Dモデルの利用が必須であり、他社製ソフトウェアとの連携も求められました。BIMをうまく活用できたことによって、従来のタワー設計に比べて32%もの資材削減を実現しました。その後の上海タワー管理も含め、環境に配慮した素晴らしいプロジェクトとなったのです。
なお、主に使用されたBIMソフトウェアはオートデスク社の「Revit」です。世界各国の技術者が集い、Revitを通じて国際的なコミュニケーションが行われました。
(出典 Autodesk
http://bim-design.com/facebook/pdf/j_shnghai_tower_construction_and_development_customer_story.pdf)
アメリカ:ジル・ヌーバウアー建築事務所
2つ目に紹介するBIM活用事例はジル・ヌーバウアー建築事務所です。先程の上海タワーに比べるとかなり小規模な建設プロジェクトです。一般的な個人住宅である本プロジェクトは、自然環境に配慮したエコロジーが重視されました。
本プロジェクトでは、BIMソフトウェアを用いて建築物の3Dモデルを作成し、配管などの干渉を削除して無駄な資源を減らしました。また、太陽の動きをシミュレーションして冷暖房や空調の位置を調整した設計を実現したほか、排出される二酸化炭素の削減を考慮するなど、あらゆる分野でBIMが活用されています。
本プロジェクトのBIM活用は環境に配慮したコンセプトと非常にマッチしており、ジル・ヌーバウアー建築事務所は個人の要望に徹底的に応えたプロジェクトとして成功を収めました。
オーストラリア:1 Bligh Street
最後に、オーストラリアで筆頭すべき1 Bligh StreetのBIM活用事例をみていきましょう。楕円形の平面を持つ巨大な事務所ビルであり、構造検討や設備シミュレーション、相互の干渉チェックなどをBIMで取り進められました。
作業所長のコメントではあるものの、30%のコスト削減や20%の工期短縮を実現できたことから、本プロジェクトはアメリカ建築家協会(AIA)のBIMアウォードを受賞しました。BIMを用いたお手本のようなプロジェクトだとされています。
(出典 Case Study: BIM Management 1 Bligh Street. Ryan Hanlen, Architectus
https://docplayer.net/22086512-Case-study-bim-management-1-bligh-street-ryan-hanlen-architectus.html)
まとめ
本記事では、海外におけるBIMの状況、海外のBIM活用事例を解説しました。
日本国内のBIM普及率は年々上昇してはいるものの、世界各国に比べると普及率はあまり高くありません。BIMの活用状況は国ごとに大きく異なり、建設に関する基準や制度もさまざまです。ぜひ本記事で解説した海外のBIM活用事例を参考にし、海外の良さを自身のBIM活用に取り入れてみてください。