BIM(ビム)とは?建築ビジネスでの活用法と3つのメリットを紹介
建設業で必須の工事請負契約とは?その概要とBIMとの関係を解説
2021.08.22

BIMwork
日本では、建設や土木の現場で「工事請負契約」を結ぶのが定番になってきました。請負契約によって発注者は、技術力のある専門業者に建設を依頼できる仕組みだといえます。
ただし、請負契約ならではの風習が建設業界に問題をもたらしてきた面もあります。3Dモデリング技術である「BIM」が注目されるようになったのは、こうした建設業界に問題の解決策になりえるからです。この記事では、工事請負契約とBIMとの関係を解説します。
建設業界の請負契約とは?概要とメリット・デメリットを紹介
工事現場の大半は請負契約によるものだといえるでしょう。この段落では、請負契約の概要とメリット、デメリットを解説します。
アウトソーシングが請負契約
民法の632条では、請負契約が定義づけられています。それによると、請負契約とは「ある人や企業が契約者から仕事を請け負い、結果に対して報酬を受け取る仕組み」だとされてきました。すなわち、企業が自社に不足している技術力、人材をアウトソーシングし、仕事を代行してもらうケースは請負契約に該当します。また、民法541条では「仕事を請けた側は必ず完成させなければならない」とされています。請負契約では仕事を完遂する義務があり、ミスや不足点がある以上、約束の報酬は支払ってもらえません。
建設業や土木業は請負契約が適用されている代表例でしょう。これらの企業は、個人や法人、官公庁から仕事を請け負い、工事を完璧に終えることで利益を獲得してきました。ちなみに、請負契約とよく似ている言葉として「委任契約」が挙げられます。ただ、委任契約は成果ではなく仕事量に対して報酬を支払う仕組みで、厳密には請負契約とまったく異なります。
建設業における請負契約のメリット
請負契約が広まったのは、依頼側にとって「労働を監督する義務がない」からです。たとえば、建設業なら設備も人材も請け負う側の企業が用意します。設計から工事まで、すべてのプロセスも請け負う側の責任で進められます。金銭面を除けば依頼側の負担は少なく、技術や労働力も請け負う側に頼れるのです。勤務時間を割いて、本業ではない建設や土木の仕事に取り組む必要もありません。
建設業における請負契約のデメリット
仕事をもらう側からすれば、請負契約には見逃せないデメリットもあります。「成果報酬」は、見逃せないポイントだといえるでしょう。請負契約では請負側が望むレベルの仕事をできないと、対価を支払ってもらえません。しかし、建設業は工事が時代とともに複雑化しており、納期の余裕がどんどんなくなってきています。また、巨大な工事になれば協力会社の数も増え、情報共有もしにくくなります。
複雑な工事計画には、一般のクライアントの理解が追いつきにくくなっているのもデメリットでしょう。そのような状態でプロジェクトを進めていこうとしても、なかなかクライアントは意思決定を行えません。結果的に工事の計画は遅れてしまい、協力会社の利益が下がることもありえるのです。建設業界や土木業界では、プロジェクトメンバーの情報共有を促進するようなツールの登場が長く待ち侘びられてきました。
BIMは請負契約中心の建設業界でどのような役割を果たす?
国土交通省の推進により、2010年ごろから日本で「BIM(Building Information Modeling)」の普及が進んできました。特に、建築業界でBIMは業務効率化をサポートするだろうと期待されています。ここからは、請負契約中心の建築業界で、BIMがもたらす変化を解説します。
BIMは建設業で何ができる?
主に、建造物の設計を3Dで行うための技術としてBIMは導入されてきました。また、専用ツールやシステムを利用することで、BIMの図面で建設の各種データベースを連動させられます。工事に必要な資材や機材を図面から確認できるだけでなく、工期や予算の計算も可能です。これらのデータは見積書や事業計画書の作成にも役立つでしょう。さらに、日影や周辺環境のシミュレーションまでBIMでは行えます。
請負契約の問題をBIMはどう解決する?
協力会社が多くなって、意思疎通がとりにくくなった建設プロジェクトの問題にBIMは対処できます。まず、BIMの図面は3Dによって具体的に作られているため、誰もが完成イメージを共有しやすいのです。専門的知識のないクライアントでも工事の全貌をつかめるので、意思決定もスムーズになります。その結果、納期遅れが発生する可能性も低くなっていくでしょう。さらに、プロジェクトメンバーが細かい修正点を見逃しにくくなり、人為的なミスも減っていきます。工事の精度が高くなるので、契約内容を守ったまま建物を完成させられるのです。
干渉チェックも容易に
請負契約が主流の建設業界では、「干渉チェック」の難易度が上がってきたのも課題でした。干渉チェックとは、各部材が重複していないことを確認する作業です。部材が重複していれば無駄な費用が発生するだけでなく、工事を正確に進められません。そのため、図面と資材リストを照会して、干渉チェックを行うのは建設業者の重大な仕事のひとつでした。しかし、請負契約を結んでいる企業が多い案件ほど、干渉チェックに必要なデータは各方面から送られてきます。それらをまとめて繰り返しチェックを行っていたのでは、どうしてもミスの発生率が高くなってしまいます。
BIMならシステムが干渉チェックを行ってくれるので、些細なミスも発見しやすくなるでしょう。さらに、3Dで完成イメージを見られるので、図面の問題点にすぐ気づけます。情報量が多すぎて人間の頭では処理しきれなくなった現場では、BIMが非常に重用されます。
請負契約中心の建設業ではBIM技術者の需要が高まっている
建設業では、請負契約のデメリットを解消するためにBIMの注目度が大きくなってきました。それにともない、BIM技術者の需要も高くなっています。これから建設や土木業を目指すならBIMを押さえておきましょう。