BIM(ビム)とは?建築ビジネスでの活用法と3つのメリットを紹介
LiDARが今注目されるのはなぜ?BIMへの活用で建築・建設業界が変わる
2021.08.22

BIMwork
車の自動運転やiPad Proへの搭載などで今注目を集めているのが、LiDARです。精度の高い3Dマッピングが作成できるLiDARは、建築・建設業界でも応用が進んでおり、今後ますます重要な技術になるといわれています。
そこで、この記事では、そもそもLiDARとは何か、どのような分野に応用されているのか、建築・建設業界でLiDARとBIMを活用する理由などについて解説します。
目次
そもそもLiDARとは何?Radarと何が違うのか?
LiDARとは、レーザー光を対象物に照射し、その反射によって対象の形状やサイズ、距離などを3Dで正確に測れる技術です。LiDARは「Light Imaging Detection and Ranging」の略であり、日本では「ライダー」と表記されることもあります。このLiDARが他の光センサー技術と異なる点は、可視光や紫外光、近赤外光を用いることで、遠距離からでも小さな対象物まで正確に計測できることです。LiDARと似た技術に電波を使った「Radar(レーダー)」がありますが、LiDARのレーザー光は電波よりも光束密度が高く、波長も短いため、高い精度を出せることが特徴です。さらに、対象物の材質も金属、非金属、岩石、水、化学物質、単一分子など、材質を選びません。
LiDAR実用化の歴史|自動運転・iPad Pro搭載など
LiDARは、実はそれほど新しい技術ではありません。1930年代には、すでに大気の観測に使われており、1960年代には地球と月の距離を正確に測定するのに用いられました。その後、1970年代には、アポロ15号による月面マッピングを皮切りに、地理的なデータマッピングに活用されるようになり、商用化も進みます。2005年には自律走行車レースの車にLiDARが搭載されて注目され、自動運転技術に欠かせない技術として継承されています。さらに2021年現在では、価格が高くサイズも大型だったLiDARの低価格化・小型化が進み、活用の場を急速に広げてきました。iPad ProへのLiDAR搭載はその代表例であり、個人向けのコンテンツとしてはAR、バーチャルリアリティの進化が期待されています。
また、ビジネスシーンでは、その精度の高さから、建築・建設業界の測量をはじめとして分野を問わず活用が進んでいます。たとえば、先に挙げた車の自動運転、下水道やマンホールなどの調査、宇宙探査、炭素循環の測定、虫・鳥の行動観測など、応用事例はさまざまです。こうしたことから、LiDARの市場規模は今後も大幅に拡大していくと予測されています。
LiDAR活用で建築業界が変わる
LiDARとBIMの活用によって、建築・建設業界が変わると予測している識者は少なくありません。それはなぜなのか、4つの観点から解説します。
LiDAR×BIMで職人技は無用になる!?
測量現場に360度撮影可能なカメラを持ち込み、LiDARのレーザー光を照射すれば測量完了という、従来では考えられなかった方法が一般化されようとしています。さらに、この測量データをBIMツールに落とし込めば、立体モデルの大部分ができあがりです。BIMとは「Building Information Modeling」の略で、3Dのデジタルモデルをコンピューター上に作成し、設計・施工・建物のメンテンスなどに活用する技術、ワークフローです。LiDARとBIMを組み合わせれば、熟練者が現場の地形や高低差などを把握しつつ、頭の中で2Dの設計図に落とし込んでいた、難易度の高い作業が必要ありません。たとえ知識や経験の乏しい技術者でも可能です。そのため、今後LiDARとBIMの2つは、建築科の大学生や大学院生、若年層の建築・建設業界人たちが、ぜひとも学んでおきたい必須技術になっていくでしょう。
ポケットLiDARの普及
ポケットサイズのLiDARが建築現場に普及するのは、ほぼ間違いないとされています。すでにLiDARを搭載したiPad Pro向けのアプリが利用可能になっており、建物のVR化が誰でもできるようになっています。従来はLiDARを活用したくても、高額・大型の製品しかなく、コストが限られる案件で利用するのは現実的に不可能でした。しかし、ポケットLiDARならば、小規模な新築・改修の案件にも手軽に持ち込むことが可能です。そうなれば、たとえば、「打ち合わせの帰りに他の現場の測量をする」「新入社員や外注に測量を任せる」なども容易になるでしょう。実際、このような機器・アプリは、計測が完了した柱や壁などの色が画面上で変わっていくなど直感的な操作仕様を備えているため、従来のような測量技術を必要としません。精度の高い点群データを簡単に収集できるため、責任者や熟練の技術者が現場に足を運ぶことが少なくなるだろうと予想されています。地道な作業と多大な工数を費やさなければならなかった測量業務がなくなれば、よりクリエイティブな業務に注力できる人も増えるはずです。
施主へのプレゼンがよりリアルに
LiDARとBIMを組み合わせることで、施主に対する完成イメージのプレゼンは、より具体的になります。従来は図面や模型、パースで進めていたプレゼンを、3Dモデルの提示に変えれば、リアリティや説得性を大幅に高められるでしょう。改修案件においても、BIMの設置シミュレーション機能、AR機能を用いることで、どのようにリフォームされるのか直感的に施主に説明できます。正確に情報を伝えられれば、施工ミスや工事のやり直しなどが発生するリスクも低くできます。
建物のメンテナンスにもLiDARとBIMが応用されている
LiDARのデータをもとに作成したBIMを、現場の映像に反映させるアプリケーションも開発されています。タブレット機器などのカメラでフロアやダクトなどを映すと、BIMデータが反映され、メンテナンスの履歴やコメントなどが確認できる仕組みです。このようなツールを導入すれば、現場作業員の点検・確認の業務負担を減らすとともにミスや漏れも減らせます。また、従来は手間がかかっていた作業内容の記録も、LiDARとBIMを用いることでダイレクトに反映させられます。
(出典 CNET Japan https://japan.cnet.com/article/35155486/)
建築・建設業界で働くならLiDARとBIMの知識は必須
さまざまな分野で実用化が進んでいるLiDARとBIMの知識は、建築・建設業界で働く人にとっても欠かせません。すでに設計や施工、メンテナンスなど、幅広い業務において、LiDARによって作成されたBIMのデータが用いられるようになっています。iPad Proなど身近な機器とアプリを組み合わして使ってみることもできるので、実際に試してみるのもよいでしょう。