BIM(ビム)とは?建築ビジネスでの活用法と3つのメリットを紹介
清水建設が現場にRevitを導入!事例から分析するBIMの魅力を解説
2021.08.22

BIMwork
建設業界や土木業界では、製図を3Dで行う技術、「BIM(Building Information Modeling」が注目されるようになりました。国土交通省の推進もあり、多くの企業がBIMを実用化しています。たとえば、業界大手の清水建設は独自のシステムとともにBIMソフトウェアのRevitを導入する予定です。
清水建設が抱えてきた課題の多くがBIMによって解決されると期待されています。
この記事では、2021年7月時点での清水建設の事例を踏まえながらRevitの強みを解説していきます。
(出典 清水建設 https://www.shimz.co.jp/)
目次
なぜBIMが必要?清水建設がRevitを導入する目的とは
BIMの需要が高まっているのは、建設業界において従来の製図方法では克服できない課題が生まれてきているからです。この段落では、清水建設がRevitを導入する目的について説明します。
工事の大規模化と複雑化
そもそも清水建設は建築・土木等建設工事の請負で利益を得てきた企業です。19世紀に初代清水喜助が開業して以来、豊富な実績を重ねてきました。建設業許可や国土交通大臣許可も取得しています。それほど経験豊富な清水建設であっても、21世紀に入ってからは建築工事の大規模化に悩んできました。建造物のデザインが多様化した時代では、どうしても工事の規模は大きくなっていきます。それにともない、必要な人材や技術も増えてきます。工事は複雑化し、プロジェクトの進行はどうしても遅くなりがちでした。また、鉄骨造建築物に関する積算業務も難しくなってきていて、工事にかかるコストも膨らむ傾向にあったのです。
精度向上が課題に
規模の大きい工事では、精度の不安もたくさん出てきます。単純な技術力の確保が難しくなっただけでなく、プロジェクトメンバー同士の情報共有が困難でることも理由に挙げられるでしょう。複雑な工事を安全に進めるには、設計段階からプロジェクトメンバーが完璧に情報共有しなければなりません。しかし、人数が多くなればなるほど、全員がリアルタイムで進捗をしっかり把握することが困難になります。また、工事が複雑化すれば計画にも細かく修正が入るようになるでしょう。そのたびシミュレーションをやり直し、図面を作り変えているとどうしてもミスが起きてしまいます。こうした課題を解決するために、清水建設はBIM導入に着手し始めたのでした。
(出典 清水建設 https://www.shimz.co.jp/company/about/strategy/pdf/policy2019.pdf)
清水建設がRevitに求めたポイントは?Shimz One BIMの概要
「Shimz One BIM」とは、清水建設がRevitをベースに作り上げているBIMシステムです。「設計施工連携BIM」とも呼ばれており、2019~2023年の間での実用化を目指してきました。ここからは、BIMの事例として清水建設のShimz One BIMを紹介していきます。
Shimz One BIMでできること
設計図をBIMによって作成し、案件の受発注から運用までを一つの流れとして進められる仕組みがShimz One BIMです。このシステムではまず、設計BIMがプロジェクトメンバー間で共有されます。クライアントが完成イメージを理解したら発注がかかり、施工段階へと進んでいきます。そして、施工でもBIMが利用され、協力会社が各工程を考えていくのです。
BIMでは資材や機材などのデータベースから、精密な工事計画を作成できることがメリットです。誰かが数字を入力し直したとしても、システムがその都度計算を行って、図面全体を書き換えていきます。そのため、プロジェクトメンバーでリアルタイムの情報を常に把握できます。そのうえ、Shimz One BIMではBMやFMといったマネジメント業とも連携しており、建築プロジェクト全体の中心になりえるシステムだといえるでしょう。
(出典 清水建設 https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2019/2019036.html)
KAP for Revit(K4R)とは何か
Shimz One BIMのRevit用アドオンとして開発されたのが「KAP for Revit(K4R)」です。K4Rは、Revitで作った構造データを清水建設が開発した鉄骨専用CADソフト向けに変換するため使用されています。清水建設では独自のシステム「KAPシステム」を採用しており、鉄骨の積算や製作に利用してきました。ただし、システムが独立していてデータの転用に大きな課題を残していたのです。K4R開発で、清水建設ではデータ入力の手間が省けて、業務効率化が実現すると考えられています。これまで数日かかることさえあった入力作業が短時間で完了することも可能です。
清水建設の現場はBIMシステム導入でどう変わるのか?
かなり大がかりな方法で、清水建設はBIM導入に踏み切ったといえます。すでに5億円を投じたBIMシステムは2021年中に完成する見込みです。ここからは、BIMシステムが清水建設にもたらすであろうポイントを解説します。
経済的にプロジェクトを進められる
BIMシステムはプロジェクトの初期から、予算を正確に算出可能です。すなわち、プロジェクトのゴーサインが出てから、予想外の費用に悩まされることが少なくなるでしょう。清水建設の場合は特に、K4Rに大きな期待が寄せられています。K4Rを利用すれば、設計者は鉄骨数量を正しく踏まえながら作業できます。その結果、競合他社よりも安価な施工計画を提案しやすくなり、競争力の強化につながっていくでしょう。積算や発注の段階に移行しても、鉄骨の仕様や数を正しく見極められるのは大きなメリットです。
鉄骨の調達情報を一元管理
設計だけでなく、データを管理しやすくなるのもBIMシステムの魅力です。清水建設はShimz One BIMの最終的な目標として、鉄骨の調達情報を本社で一元管理できるよう調整しています。清水建設のように拠点が多いと、それぞれで受発注業務を行うようになる傾向が顕著でした。ただし、こうした状態が続いてデータベースが一元管理されなければ、全社向けに共通の戦略プランを通達することが難しくなっていきます。全社でかかっているコストを計算するだけでも、かなり骨の折れる作業となるでしょう。Shimz One BIMによる情報の共有化は、清水建設が全社で連携をとっていくための重要なきっかけとなる予定です。
清水建設のようにBIMシステムを導入する企業は増えていく
BIMシステムは建築業界で不可欠なシステムになりつつあります。清水建設のように、BIMシステムに巨額投資をする企業も増えていくでしょう。これから業界を目指すのであれば、BIMについての知識は必須だといえます。