BIM(ビム)とは?建築ビジネスでの活用法と3つのメリットを紹介
建築を学ぶなら知っておきたい!海外のBIM事例6選
2021.08.22

BIMwork
BIMは「Building Information Modeling」の略語で、主に建築界で導入されているコンピューターを使った新しい手法のことです。BIMを導入することで、建築物の完成形を3Dで表現したり、建築プロジェクト全体のワークフローをシミュレーションしたりすることができます。日本でも定着しているBIMですが、その先進国は海外です。
この記事では、東アジア・東南アジア・ヨーロッパ・アメリカのBIM事例を紹介します。
東アジアにおけるBIM事例
日本が含まれる東アジアの国々でもBIMが導入されています。ここでは、東アジアを代表するBIM推進国の中国と韓国における事例を紹介します。
中国のBIM事例
経済大国の1つである中国では、民間レベルでは主に大都市における旺盛な建築需要を満たすために、国家レベルでは内陸地域を含めた社会インフラ建設整備のためにBIMを導入しています。そのため、中国ではBIM運用のサポートを請け負う複数の企業が生まれています。その中で代表的な企業が「タイコン」(Taikong Technology)です。「タイコン」は中国でも数少ないBIM導入のサポートを行う企業です。具体的には、独自に開発したクラウドプラットフォーム「isBIM」を使って、BIMを導入した企業が抱える問題を解決するためのサポートを行っています。
「isBIM」は、日本でも活用されている「BIM360」と同種のクラウドプラットフォームです。プロジェクトチームやワークフローとさまざまなデータを連携させることによって、主に施行面における問題点の改善を支援してくれます。また、「isBIM」を導入することによって、中国企業はBIMデータの共有や管理を海外企業に依存することなく行えるため、情報の流出を防ぐといった観点からも重要な役割を果たしているのです。
国家レベルでは、数多く計画されている大規模な社会インフラ建設整備にBIMが導入されています。中国では、社会インフラ整備に使える予算が莫大です。そのため、プロジェクトを請け負う企業は採算度外視で、「3次元構造解析ソフトウェア」や「3次元CAD」といった最新のBIMを導入しています。また、各行政レベルでは、BIMを推進するための研究プロジェクトが着々と進められています。
(出典 isBIM https://www.isbim.com.hk/services)
韓国のBIM事例
韓国では、2009年に「国家BIMロードマップ」が制定されています。それに続いて、2010年には「国家建築BIMガイド」が策定されたことで、建築界におけるBIMが一気に推進されたのです。2012年からは公共調達庁が牽引役を担いながらBIMの導入を企業に促し、2016年には公共調達庁が発注するプロジェクトに対してBIMが義務化されています。このように、国がリーダーシップを発揮してBIMを推進してきたことで、韓国の大手建設会社では当然のことのようにBIMを導入しています。
東南アジアにおけるBIM事例
東南アジアを代表するBIM先進国はシンガポールです。ここでは、新しい建築技術を積極的に取り入れる建築先進国でもあるシンガポールのBIM事例を紹介します。
シンガポールのBIM事例
シンガポールでは、2009年から国が旗振り役となってBIMを推進してきました。行政サービスの電子申請などにBIMによるデータを活用しながら、建築分野においてもBCA(建築・建設庁)がリーダーシップを取りながらBIMの導入を促進してきたのです。そのため、BCAでは、企業がBIMを導入する際に資金・人材育成・実務において、さまざまな支援を行ってきました。資金面では設備投資やコンサルタント料といった初期費用だけでなく、社員の研修・訓練に必要な費用も援助しています。
人材育成に関しては、専門学校を創設してBIMを体系的に学べる体制を整えています。また、国立シンガポール大学土木環境工学科では学生に対してBIMが学べるセミナーを開催するなど、将来の国を担うエリートへのBIM教育にも抜かりがありません。実務面においては、企業とともにソフトウェアの開発を行うなど、効率的なBIM運用に繋がる独自の政策を推進しています。
(出典 Youtube” TODAYonline” https://www.youtube.com/watch?v=9byat0VhqFk)
ヨーロッパ及びアメリカにおけるBIM事例
ヨーロッパでは北欧諸国がBIMの先進国として知られていますが、イギリスも国を挙げて推進に力を入れています。ここでは、BIM先進国の1つであるフィンランドとヨーロッパを代表する推進国のイギリスに加えて、アメリカの事例も紹介します。
フィンランドのBIM事例
フィンランドでは1997年から2002年に渡って推進された「VERAプログラム」によって、さまざまなIT政策が成果を挙げてきました。そのうえで、フィンランド政府が取り組んだのがBIMです。2007年には政府資産運用管理公社(Senate Properties社)が発注する建築事業に関して、その受注要件にBIMを加えました。その結果、同年にはすでに建築家や設計事務所の93%が、程度の差はありながらもBIMを導入するといった成果を生んでいます。2012年には産官学が連携して、「COBIM2012」という13巻にも及ぶBIMに関するガイドラインを発行し、海外でも多くの国が参考書として取り入れています。
イギリスのBIM事例
イギリスではフィンランドなどの北欧諸国には遅れを取ったものの、2009年に「AEC」と呼ばれるBIMに関するガイドラインを策定し、2012年にはVer.2も公開して推進を図ってきました。2016年にはすべての公共建築事業に対して「完全に恊働的な3DBIM」を義務付け、2025年には「公共建築事業に携わる者すべてが、統合された1つのモデルだけで設計を行う」という目標の実現を目指しています。
アメリカのBIM事例
アメリカでは2000年代前半に、連邦政府が所有する施設の管理を行う「GSA」が発注した建築プロジェクトに対して、コストや工期の遅れといった問題を解決するためにBIMを活用する決定を行いました。2003年には「3D-4D BIM計画」を発足させ、数々の実証実験を行っています。また、2007年以後に設計を開始する建築プロジェクトに関しては、BIMが発注要件の1つです。同年にはAIA(米国建築家協会)が、「IPD」というBIMによる設計から生産までの統合的なプロジェクトの推進手法を発表しています。このような国家としての政策や民間団体による取り組みの結果、2012年には70%超の企業がBIMを導入しているという調査結果が公表されています。
もちろん、ガイドラインの策定も忘れていません。2007年にはNIBS(国立建築科学研究所)が「NBIMS」というガイドラインを策定し、2012年にはVer.2を発表しています。アメリカ政府はこのガイドラインをベースにして北欧諸国・カナダ・韓国などと連携しながら、その内容を拡張・充実させていく方針であることを表明しています。
(出典 NBIMS https://www.nationalbimstandard.org/)
海外と日本のBIMガイドラインを参照しよう!
建築を学んでいると見聞きすることがあるBIMは、海外では珍しい手法ではありません。少し遅れ気味ながら、日本でも2014年には国土交通省がBIMに関するガイドラインを公表しています。このことからも、今後は日本においてもBIMの導入が更に促進される可能性が高く、建築を学ぶ者にとっては必須のスキルになると考えられています。そのため、日本と海外のガイドラインを参照しつつ、常に最新の情報を取り入れることが必要になるのです。